はじめに
2023年6月5日、レクサスは新型コンパクトSUV「LBX」を発表しました。LBXはレクサスの現行ラインナップにおける最小モデルとなる車両で、トヨタの「ヤリスクロス」をベースとしています。
日本での発売は2023年秋頃を予定されており、早くも注目と期待の集まっている1台です。
車名のLBXとは「Lexus Breakthrough X(cross)over」の意であり、ブランドとしては初めての3文字表記となっています。また従来のレクサス車において、モデル名の頭にLがつくモデル(LFA,LS,LX,LC,LM)はそのカテゴリにおけるフラッグシップモデルとなっています。
従来のヒエラルキーや価値観においては、最小のモデルはそのブランドの入門車種であり、価格的にも手の届きやすい設定がなされることが一般的です。
それではなぜ、LBXはその名を冠して登場したのでしょうか。今回は今わかっている情報を元に、独自の分析していきたいと思います。
※このページで使用する画像はすべて、トヨタ自動車のニュースルームの記事(https://global.toyota/jp/newsroom/lexus/39233145.html)の画像集より引用しています
どんなクルマか?
先ほど述べたように、LBXはレクサス最小のSUVであり、トヨタのヤリスクロスをベースとしています。
トヨタの小型車向けプラットフォームである「TNGA GA-B」を採用しています。もちろんトヨタ車との差別化を図るべく、レクサス独自の味付けを加えていることでしょう。
ボディサイズは4190×1825×1560mm(全長×全幅×全高)※日本仕様はルールアンテナが付かないため全高は1550mmと、都市部でも扱いやすいボディサイズです。
ドライブトレーンにはハイブリッド方式を採用し、直列3気筒1.5リッターエンジンとバイポーラ型ニッケル水素電池を組み合わせます。駆動方式はFFと4WDを選択可能です。
ベースとなるヤリスクロスとのスペック上の比較は以下の通りです。
レクサス LBX(プロトタイプ) | トヨタ ヤリスクロス(HYBRID Z) | |
全長 | 4190mm | 4180mm |
全幅 | 1825mm | 1765mm |
全高 | 1560mm | 1590mm |
ホイールベース | 2580mm | 2560mm |
ドライブトレーン | M15A-FXE 直列3気筒1.5リッターエンジン+電気モーター | M15A-FXE 直列3気筒1.5リッターエンジン+電気モーター |
電池形式 | バイポーラ型ニッケル水素電池 | リチウムイオン電池 |
駆動方式 | FF/4WD | FF/4WD |
LBXならではの魅力
上記スペック比較を見る限り、数値上LBXは「ヤリスクロスの上位互換」と言わざるを得ません。しかし、レクサスの看板を背負い、人気のセグメントに参入するわけですから、それ相応の作り込みがなされていることは想像に難くありません。
レクサスらしい走行性能や安全性能などは、言うまでもなく十分以上に満足できるものでしょうから、ここでは、筆者が注目するLBXの魅力ポイントを3点紹介します。
破綻のないエクステリアデザイン
レクサスは近年、「スピンドルグリル」に代表されるデザイン上の特徴を強く押し出したモデルを展開していました。しかしながら、一部車種においてはどことなくベースとなったトヨタモデルの雰囲気が残るデザインであったことは事実でしょう。もちろんトヨタモデルのデザインを否定するわけではないのですが、せっかくレクサスを選ぶのであればその世界観を十分に堪能したいところ。
今回のLBXでは「ユニファイドスピンドルグリル」を採用し、グリル単体で世界を表現するのではなく、ボディデザインをグリルと調和するようにデザインされています。主観的な評価にはなりますが、非常に調和の取れたスタイルに思います。
また、世界的なデザイントレンドにも則っており、テールライトには左右が繋がった一文字型のものが採用されています。
グレードによるヒエラルキーの撤廃
従来のレクサスモデルは、標準モデルのほか、よりラグジュアリーに仕立てた「Version L」と、よりスポーティな「F SPORT」など、キャラクターの違いによるグレードが展開されていました。
しかし、今回のLBXは「LBX」という単一グレード展開となりそうです。その代わり、インテリアの仕立ての違いによるキャラクター分けがなされる模様であり、レクサスの提唱する「プレミアムカジュアル」を体現した「COOL」、「RELAX」、ELEGANT」、「ACTIVE」 、「URBAN」の5つのコンセプトが用意されるとのことです。ユーザーは基本的に、この5つのインテリアコンセプトに、好みのボディカラーを組み合わせることになるのでしょう。
これにはいくつかのユーザーメリットがあると考えます。
今まで、たとえばスポーティーな外観が好きだが、内装はシックに仕立てたいというユーザーにとって選択肢が非常に限定的でした。車種にもよりますが、内外装の組み合わせがグレードによって異なっており、理想的な組み合わせを実現することが難しい場合もありました。
また、内外装の配色だけでなく装備などでも同じことが言えます。F SPORTのスポーティーな足回りで、Version Lの落ち着いた見た目と豪華な装備が好みという場合、どちらかを犠牲にしなければなりませんでした。
また、グレードによるリセールバリューの大きな差異という現象にも一石を投じる可能性があると考えます。いままでのレクサス車では、ほとんどの場合、F SPORTが圧倒的に人気で、リセールバリューにもそれが反映されていました。もちろん今後の動向は不明ながらも、単一グレード構成にすることでリセールの下落に過度な心配をすることなく好みの仕立てを選ぶことができそうです。
約33万通りから選べる!ビスポーク・ビルドであなただけの1台に
これは個人的にはLBX最大の魅力だと思っています。今回のLBXでは、先述の5つのインテリアコンセプトに加え、「Bespoke Build(ビスポークビルド)」という選択肢が用意されます。これは、シート表皮やステッチ、シートベルトの配色などをチョイスできるほか、Bespoke Buildでしか選べないアイテムなども設定し、よりユーザーの好みのLBXを仕立て上げることができます。
そもそも”Bespoke(ビスポーク)”とは、「オーダーメイドの、特注の」という意味であり、ロールスロイスなどの超高級車の世界では当たり前に行われてきた手法です。
また、レクサスのライバルとなり得るブランドにおいても、同様のサービスは存在します。BMWの「BMW Individual」や「Porsche Exclusive Manufaktur」など…
ただし、今回のLBXに用意されたプログラムは、あくまでも既存の選択肢の組み合わせの中からチョイスできるというものであり、イチからユーザーの要望を訊いて完全オリジナルのプロダクトを仕立て上げるというものではないようです。
とはいえ、従来の選択肢よりも圧倒的にユーザーの希望を叶えることができるこのシステムは歓迎すべきものですし、何よりレクサス、というよりもトヨタという大量生産を得意とする企業においてこのような取り組みを行うということに拍手を送りたいところです。
車名に込められた意味
先にも述べた通り、LBXとは「Lexus Breakthrough X(cross)over」という意味が込められているそうです。LFAを除く量産モデルとしては初めて、アルファベット3文字を採用している点、カテゴリのフラッグシップモデル以外で”L”から始まる点、アルファベットの後に排気量を表す数字が用意されない点など、レクサスの従来の命名パターンとは大きく異なっています。
まず初めの”L”とは、”Lexus”のイニシャルを意味します。今までのレクサス車(※LFA除く)で”L”から始まるモデルは、”Luxury”(=贅沢な)のイニシャルとされており、今回初めての命名ルールが採用されたことを象徴づけるものです。また、”B”すなわち”Breakthrouth”とは「現状の課題や困難を突破する」という意味です。レクサスというブランドにとって、このモデルは新たな突破口となることが期待されているのです。実際、新たなグレード体型やビスポークプログラムの展開など、従来の「車格絶対主義的な価値観」では決して実現し得なかった仕組みがこのLBXでは展開されています。LSやLCといった、大型モデルを筆頭に形成されたレクサスヒエラルキーを突破する、クラスレスな価値観を提供する1台としてLBXは非常に期待ができそうです。
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