こんばんは、Jam023です。今回はGTspotの長丁場のレースにおけるピット戦略と状況判断について、gibusonさん主催の2020 GTS SUZUKA 10HOURS Pro Classを題材にして書いていこうと思います。取り上げている画像も全てgibusonさんの配信画面を切り取ったものです。
手前味噌にはなりますが、今回このレースで私は555号車のHEAT3を担当しまして、2位スタートからトップチェッカーを切ることができました。これはまず大前提として前ヒートを担当したSaika選手、Kerokkuma選手の頑張りのお陰で非常に良い位置からスタートできたこと、他車のミス等の運によってもたらされた部分がかなり大きいです。
一方で、レースの中で私なりに戦略を組み立て考えながら走ってこうした成果を生み出せた部分も多少はあるのかなと思います。今回のレースではチーム内でVCも繋げておらず、純度100%走っている中で得られる情報をもとに組み立てたものなのである程度汎用性はあるかと思われますので是非参考にして頂ければ幸いです!
レースにおいて果たすべき役割を考える
Vol.1でも書いたように、この手のレースはまず自分の中で目標を掲げることが大切です。特に今回のようなチーム戦では後のドライバーのことがあるため尚のこと大切になってきます。ヒート2を終えた段階での順位とタイム差がこちら。
413号車が1位で我々555号車は僅差で2位。3位の11号車とは約20秒差あり、その後ろ7号車、99号車とは約40秒差あります。この状況の中で私が果たすべき役割は以下の通り。
①413号車、11号車の前でゴールし、ヒート4で1位スタートできる状況を作る
②7号車、99号車に大差(10秒差以上)をつけられないようにする
この2点が達成されれば十分だと考えました。もちろん1位が取れればそれは理想ですが、Vol.1でも書いた通りこの段階では現実的に達成可能なものを考えるべきです。
スタートの給油量は85L。軽タンで序盤に413号車にしかけてそのまま15周×4スティントの逃げ切り戦略を念頭においてスタートします。が、この構想はすぐに打ち砕かれることになります。
第一スティント ~アンダーカットの決行~
スタート直後の1,2コーナーの攻防で順位を2位から3位に落としてしまいました。しかし、大切なのは413号車と11号車の前で走ることができているという点です。これは非常に精神的に楽になりました。この時点で目標①は達成されたわけですから、あとは前と大差をつけられることが無ければ私の役割は達成されたことになります。
前を走るのは99号車のfujio選手と7号車のlegacy選手。いずれも予選タイムは私よりいいタイムを出しており、かつ場数も私より確実に多く踏んでいてバトルにも強いドライバーです。WRXという車の特性を考えてもここは様子見に徹するしかありません。
走ること数周、ペースは2分00秒台前半といったところ。私が85Lで一人で走るときのペースが大体1分59秒台後半であることを考えると、前2台は確実に燃料満タンでスタートしていると考えるのが自然です。また、選手の実力を考えると燃費を抑えて走っていることも視野に入るでしょう。
ちなみにこれは私の持論ですが、燃費走行をするかしないかでピットインの回数が変わるケースでなければ1位走行時は燃費走行はしない方がいいと考えています。どちらにせよ後ろの車にはスリップ取られて自分より燃費を抑えられることには変わりませんし、燃費走行によって本来自分のペースを持ちえないドライバーにもついていけてしまうペースになることで隊列が短くなる、それだけ逆転されるリスクが高くなるからです。
閑話休題。
3ストップ戦略だと1スティントの燃料消費量は約40L。85Lと満タンスタートだと2回目のピットインで給油時間に差が出ます。つまりこのまま走っていると3スティント目で差が出ることになります。一方で満タンスタートの弱みとして第二スティントも約15L重い状態で走らなければならないという点があげられます。また今回はコースの特性上スリップについて走ることが容易でかつその場合単走よりタイムが伸びる、かつ燃費やタイヤにも優しい状態で走ることが可能です。
以上の観点から、第二スティントは後ろにスリップにつかれない状態で1位を走ることが理想だと考えました。そこで戦略の変更です。15周×4スティントから12周+16周×3、つまりアンダーカットを仕掛けることにします。
アンダーカットの一番のリスクは古いタイヤで走るドライバーに詰まることです。タイヤ交換のみの場合ピットでロスするタイムは約12秒。走りながら右上のマップを見て12秒数えて集団から2秒後ろあたりでコースに復帰できることを確認。また、隊列が短いことからアンダーカットでの順位アップが期待できる分他車もある程度早く入る可能性が高いことからも詰まるリスクは少ないだろうと考えピットインしました。
第二スティント ~自分のペースの確認~
全車一回目のピットインした後は1位になり、2位との差は2.5秒。狙い通りです。ここは特に何かできることもないので黙々と走ります。2位の99号車が自分より15L重い状態で走っていることを念頭に置きながら、自分とのペースの比較を行います。これをもって第三スティント以降優勝を狙いに行く走りをするか、それとも後ろでついていきながら大人しく最低限目標を達成するための走りに徹するかを判断します。第二スティント16周目、2位との差は3.5秒に広がりました。
軽タンを生かしてタイムを広げることができた、理想的な展開です。おそらくこれであれば同じ燃料でもペースはさほど変わらないと判断できます。第三スティント以降は優勝を狙いに行く走りをしようということで結論を出し、16周目でピットイン。99号車も同じタイミングでピットインしました。
第三スティント ~第四スティントに向けての準備~
軽タンスタートということで給油量で差が出て3.5秒あった差は完全に無くなった状態でピットアウト。追い付かれはしましたが第一スティントで不利だった状況からイーブンにまで戻したことを考えれば上出来です。
ここで後ろにスリップを取られながら1位を走るという状況が初めて生まれます。この状態で抜かれないペースで走ることができるのか、第四スティントを同じ状況で迎えた場合どうなるかを試す絶好の機会です。結果は…
はい、秒で抜かれました。WRXの直線スピードの遅さたるや、西ストレートで余裕でインに並ばれました。130Rで粘るのはリスクが高すぎるのでここは引きます。この結果から、第四スティントでも同じ状況が生じた場合、たとえブロックラインを取ったとしても抜かれるのは時間の問題だと言えます。このことから第四スティントもスリップを取られない位置で1位を走ることが必要なので、16周×2から15周+17周に変更し、アンダーカットの決行を決断します。
幸い2位というポジションはピット戦略の上では1位よりも先に動けるので、1位のfujio選手が私のアンダーカットを読んで15周目にピットインしない限りは成功する可能性が高いです。読まれたらそれはもう仕方ないというところ。
またせっかく2位で走れているので逆に1位に仕掛けることができるのか、WRXの戦闘能力をここで試します。が、正直並ぶことすら厳しい。もちろんアンダーカットの成功率を高めるために燃費走行を意識しているのはありますが、仕掛けるとしたらそれは相当リスクが高いバトルになると感じたのでアンダーカットを先読みされたら素直に後ろについていくしかないと感じました。
結果的には先読みされることなく早く動くことができました。アウトラップは猛プッシュを試みますが、一つ予想外のことが起きます。
第四スティント ~気合、根性。ただ冷静に~
猛プッシュのアウトラップを終え、ホームストレートを迎える場面。戦略違いでまだピットに入っていない66号車を前に、「戦略違うしここは素直に抜かせてくれるかな~」と思っていたらブロックラインを取られてしまいます。正直これは予想外でした。ここで詰まってしまうと後ろに追い付かれ私の戦略が水の泡になります。
しかしここで焦ってはいけません。あくまでも目標は「99号車、7号車に大差をつけられずにゴールをすること」、1コーナーで並んでもしオーバーシュートでもしたらそれこそ最悪です。加えてヘアピンで抜けばその後はクリアな状態で走れるわけですから、また後ろに差をつけるチャンスは巡ってきます。こういった状況判断においても目標を定めることは大切になると改めて実感しました。
この後は後ろが競ってくれることを祈りつつ、気合。ただただ気合、根性。タイヤの持たせ方が悪かったのか、59周目の130Rで飛び出しそうになり、スピードを緩めたところ2号車に一気に差を詰められてしまいましたがなんとか堪えトップチェッカー。60周振り返ると私のファステストは1:59.426。1つ2つ下のクラスでも上回るドライバーは沢山いらっしゃることでしょう(笑)
頭を使いながら戦略を考えて走るというのは時には失敗しますが、やはり楽しいです。今回の考え方というのはあくまでも1例で、コースやタイヤのコンパウンド、或いは消耗倍率によってもいくらでも変わります。ただ1戦1戦考えながら走り、自分のカードを増やすことがその先に繋がることは言うまでもありません。そんな時に、この記事が皆さんの中で少しでも役に立てばなと思います!
<GTSportオンライン攻略シリーズ>
・【GTsport】オンライン攻略 Vol.2 安定性の向上
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